▲ジャパニーズ・CM・ライフ・2004・第二回 / 鈴原 順▲
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やあ、どうも今晩は。前回から早四ヶ月が経とうとしているけど、みんなどう?素敵なCMライフを送ってるかな。前回は週一回以上のペースで掲載していく所存なので宜しく、なんて大見得切ったんだけど、あっという間に四ヶ月が過ぎてしまったよ。ごめんごめん。ただ、どうも、こう、インスピレーションがね。前回、CMは芸術である、とぶち上げた以上、お茶を濁すようなものは書きたくなかったのでね。申し訳ない。それにしたって本タイトルは「ジャパニーズ・CM・ライフ・2004」なのに、2004年が終わってしまうということで、ドラマ「大奥」を片目に書きます。
さて今回取り上げるのは正月を控えたこの時期のプリンタのCMです。ここでは長谷川京子出演のピクサス(http://www.atamo.jp/shop/pc/canon_pixus.html)を例に論じていこう。僕はこのCM好きだよ。長谷川京子のファンって言うわけではないのだけれど、綺麗で、シンプルなCMだしね。製品自体もかっこいいし。
ただちょっとプラスアルファするとしたら、もっとよくなると思うわけ。みんなはどんなプラスアルファがいいと思う?
僕としてはこのプリンタは自動両面印刷が可能だそうで、迅速な年賀状印刷を売りにしているわけで、こう付け加えるべきだと考える。「迅速なる印刷によって浮いた時間、一筆を書き加えることが可能です」と。
ところで僕の趣味は多岐に渡るんだけど、そのひとつに新聞の読者投稿欄を読むってのがある。この抱腹絶倒七転八倒な楽しみについては残念ながらスペースの都合上省くけど、そこで多く見るものに年賀状の味気なさを嘆く高齢者の投稿がある。印刷されたものだけじゃつまらない、せめてひとごと添えて欲しいって。
あのさ、君は携帯電話「ツーカーS」(http://www.tu-ka.co.jp/tokyo.html)を知っているかな。非常にシンプルな操作、大きなプッシュボタンを特徴とした携帯電話で、高齢者を中心に売れているんだってさ。七面倒で煩雑な機能をカットして、純粋な「携帯」用「電話」に立ち返ることで高齢者の需要を満たしたわけだ。
これ、参考になるよね。プリンタ市場については詳しくないけれど、今後購買対象
の中心になっていくのは、恐らく現在パソコンやプリンタそのものに親しみを持っていない世代だよ
。興味ある人は既に持っているだろうし、ほら、ちょうど団塊の世代と呼ばれる人たちが定年を迎えるからね。この人たちにつ
いてはまた論じる機会があるだろうけれど、質素を旨とするこれまでの世代とは異なって、購買の楽しさを知っている人たちだ。食
生活ひとつとったって、煎餅よりもフランス料理を食べたがるというし、彼らは様々な業界で大きな新市場と目されているんだ
って。彼らの定年によって大きく日本の経済が変容すると言わ
れているくらいだ。そこで高齢者を購買対象者に据えてCMもつくらねばならないだろう。何しろCMってのは経済活動に深く根ざした芸術であるからね。ちなみに復習をかねて書いておくけれど、これ、決してCMにとって負の拘束って考えちゃ駄目だったよね。俳句や短歌の如く、拘束が激しければ激しいだけ(例えば15秒で、とか31字で、とか)、パラノイアティックな芸術性がほとばしるんだった。そこがほとんど拘束事項のない各種現代芸術との大きな差異であり、面白いところだ。
さて結論に至るけど、もう言いたいことはわかったよね。ただ徒に若者に媚びるのではなく、高齢者をリサーチする必要があるってこと、これこれ。自分の頭の中のイメージで「老人は煎餅さえ喰わせておけば文句は言うまい」なんて判断するんじゃなくて、実際に市場に乗り出さなきゃね。これ、当たり前なことのようだけれど、これまで案外とないがしろにされていた視点だ(じゃなきゃ臨床、なんて言葉の現在の氾濫はない)。
「自動両面印刷で一筆添える時間が生まれる」
「たったひとごとでも嬉しい」
「印刷されただけの年賀状はもういらない」
「スローライフのために」
こんなキャッチコピーを添える、それが今回の僕の提言だ。どうだろうかな?
今回はこれでおしまいだけど、次回は年内いさびの会公式メルマガ「肺」(詳しくはhttp://isabi.nobody.jp/hai.htm)に掲載するから(今度は本当)、乞うご期待。次回は主婦層を対象としたCMに関して、意見するつもりです。みんなも主婦層を対象としたCMをチェックしておいてね。予習予習。
最後に、CMは芸術であり、芸術を楽しむのにガイドラインなんて不要なのだろうけれど、僭越ながら楽しむコツを述べさせてもらうと、CMクリエイターになった気分で見るといいんじゃないかな。このCM、こうした方がいいのに、そんな呟きが自然と漏れたらあなたは最早立派なCM生活者です。
ではみんな、年末のCMライフを楽しんでね。ばいばい。
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公開開始日:平成十六年十二月十八日
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