■ジャパニーズ・CM・ライフ・2004 / 鈴原順■

 

 

今回は前振りなくいこう。本当は前振りも考えてあったんだけど、今回は以下の本文を書いているうちに激昂してきちゃってさ。まあ、僕の前振りファンには申し訳ないんだけど、本文で楽しんでくれ給え。

きみだって、暴力は嫌いな方じゃないだろ。

 突然だけど、ここで問題。サティ(http://www.mycal.co.jp/saty/)のCM、西友(http://www.seiyu.co.jp/)のCM、ぺ・ヨンジュンが出演している大半のCM、ジャイアンツの選手が出演しているリポビタンD(http://www.taisho.co.jp/index-j.htm)のCM、などなど。以上のCMに共通したことはなんでしょう。あと花王(http://www.kao.co.jp/)のCMにもそんな傾向があるかな。

さっと答えが浮かばないからって悲観しないでね。そんな詰め込み教育とは違うんだから。

さて、答えだけど、それはださいってこと。僕なんてCM好きとしてこれらのCMに対して怒りすら感じるよ。だってこのだささって視聴者への侮辱じゃない?これをしておけばいいだろう、こいつを出演させればいいや、あのCMかっこいいから真似てみようかな。そんな感じで。

ふざけてるよね。

不買運動したいくらい。これらのCMのもうひとつの共通点として挙げられるのはその多くが対象を主婦層としているって事だから、つまりはこれらの企業は主婦を見下げているってわけだ。今だったらぺ・ヨンジュンを出しとけばいいだろ、って声が聞こえてきそう。主婦の皆さん、なめられてますよ。

第一回に書いたとおり、この論はただ批判するだけの無責任なものではなく、代替として対案を示すものだ。それでこそCMクリエイターと僕が同じ土俵で勝負できるわけで、勿論僕は他者を批判する以上、批判を受けることは覚悟している。大体、一般的な批評なんて批評家が偉そうにねちゃねちゃ文句つけているだけで、勿論そこにも意義はあるわけだけれど、僕は本当にCMが好きだし、より発展してほしいと考えているから、そのためにも対案の提示を自分に義務付けているわけ。

さて、本論に戻って、僕がここで提案したいのは、冒険しようってことだ。

冒険って言ったってシュルレアリスムを目指せとか、既成の価値観をぶっ壊せって言っているんじゃない。CMってのは数ある芸術の中でもかなり生活に根ざしたものだから、突飛な方向にトリップしにくい。何しろその目的は企業や商品の宣伝だからね。死ね死ね死ね、って連呼するCMは確かに視聴者を何事かって振り向かせるインパクトはあるけれど、イメージがいいとは言えない。あるいはスカトロジーめいたCMも、企業イメージを思いっきり低下させかねないよね。

でも冒険って、そういうものだけじゃないと思う。

例えば「冬のソナタ」が年々人気が低下している和製ドラマの追随を許さぬヒットを記録したのだって、韓国俳優に人気が集中しているのだって、あるいは小泉首相が就任当時国民から絶大な支持を得たのだって、「冒険」によるものだ。

つまり冒険ってのは既成の概念をちょっといじるだけでいいんだね(勿論、いじりかたがマニュアル化されちゃ駄目だけど)。何もぶっとぶだけが冒険ではない。無理やり例示すると、アマゾン探検だけが冒険じゃない。ほんの近所でもいつもは通らない裏道を通ってみる、それだって十分に冒険なんだよ。

そんな、ちょいとした 冒険を実行して成功した例は挙げていけばきりがない けれど、アメリカドラマの「24」や雑誌「広告批評」の2004CMトップ10にランクされている日清のCM(ミスチルの「タガタメ」が流れる感動的なCMね・http://www.nissinfoods.co.jp/product/cm/)、古くはマルイのIC戦略の一環として為されたロゴマーク(ご存知「oioi」)もこれかな。単純に言えば、「24」はリアルタイムな時間の流れをドラマに導入したわけだし、日清は映画のような描き方をしたわけだ。あるいはモーニング娘。だってそうかもね。

その点日本の多くの分野においては、ここを押さえておけば、みたいなマニュアル主義が蔓延しているんじゃないかな。これはCMも例外ではない。適当な清潔感、適当に売れている有名人、適当な(そして大抵はくだらない)笑い、適当な(そして大抵は下品な)親しみ易さ、そんなマニュアル主義ないかな?

特に有名人の人気にあやかったCMって、ばかみたいに沢山あるよね。そんな有名人に立脚したCMって芸術としてのCMとして考えたとき、最低だよね。だから主婦層なんて本当にばかにされているよ。挑戦的なCMなんて日本では本当に僅かだけど、しかもそのほとんどが若者向けだもんね。

でも主婦だってこのマニュアル主義的マンネリ世界には飽き飽きしているわけ。それは韓流ブームに現れているよね。

日本人はよく新しいもの好きとか、外国好きって言われるけど、この根本には日本のマニュアル主義的な性格が潜んでいるんじゃないかな。つまり日本には猫も杓子も的なものしかない。だからそれに飽き飽きして、そのマニュアルから(ちょいとだけでも)逸脱したものってなると、外国に求めるしかないわけだ。

あれ、いつの間にか文化批評っぽくなっちゃったぞ。嫌だな。えらそうな文章になってる。急いで結論に至るけど、つまりCM、特にマニュアル化の激しい主婦を対象としたCMは冒険しなきゃね、っていうこと。企業は安逸なマニュアル主義に気をつけてね。ばいばい。

 

※ちなみに次回は年明け早々を予定。素敵なCM正月を送ってね。

 

 

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頓首。

(メルマガ「肺」製作委員会)

 

公開開始日:平成十七年一月二日

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