世界の終わりと
ガールズ・イン・ザ・トルコ・バス
鈴原順
著者注@
本作品に関する著者解説、弁解、謝罪はこれを一切お断りします。
あんまりだよな。
いい女と思って結婚してみれば、かわらけ。
うん、でも、まあ、それはそれでいいんだけど、未開地好き。
えっちらおっちら新婚旅行にやって来たのは彼女が選んだ情報ゼロの後進国の未開の孤島。
唖だ。
片輪だ。
気が違いそうだ。
食う寝るところに住むところ、何を捨てても情報だけは捨てられない現代人たるこの俺。
携帯電話にパソコンその他、情報機器が全て使えず、唯一の情報源が週に一度届く薄っぺらな新聞というこの未開の地。
これは何の因果か、青色吐息に騙されたと妻を睨めど、彼女はさっさと外国の旅行者と打ち解けビーチ三昧。
さっさと現地食を貪り、さっさと腹を下し、親しくなった西欧貴族の末裔の好意でさっさと帰国してしまった。
しかし俺は帰れないのだ、残留だ。
すぐにも帰りたいのだが、国際空港へは船舶が週に一度往復するのみ。
世界の終わりはそんなときにやってきた。
それ来た今来たここに来た、まがうことなき世界の終わりがやってきた。
退屈怠惰に亀裂が生じ、世界の末端グッドバイブレーション。
畜生めって俺は吼える嘆く落涙まっしぐら。
つんぼ桟敷だ。
てめぇは祭りに足切りだ。
とんでもないドタバタあっちこっちで繰り広げられているに違いない。
なんの因果だと俺は椰子を編んだベッドで七転八倒。
俄役者となった六十億の知的生命体が最期のお祭りを繰り広げているに違いない。
ぬむと鼻息立てたところで俺は後進国の真っ只中。
猫は塀から飛び落ちて、犬は空飛ぶ、ここは退屈パラダイス。
のんびりゆったり地獄変。
はしゃいで喚いて血液沸騰、ぼこぼこ溢れてどばっと散りましょほとばしれ、それが現代人の今際の際ではないのか。
ひるものなくて、俺は呆然愚鈍の濁ったホイールチェアマン。
ふわふわ雲にそよそよ風、住民は糞度胸か白痴か、白痴に決まっているが能天気にルーティーンライフ。
ヘマだとん馬だミステイク、悔やんだ時にはもう遅い。
本来ならば俺が奏でる協奏曲、何が悲しくて似非ジェントルマン。
待て待て待てと俺は考え改める。
みんなが例えいなくても、ひとりぼっちだろうとも、筋を通すが現代人。
むうとうなれば準備よし。
めくらめっぽうやってやりましょホトトギス。
儲かる桶屋にロンパリ町人。
破れるまでは生娘です。
夢よ無限よさようなら。
よろしいよろしい、観客エスで、自作自演の自我に「自我」。
らりぱっぱとなってみようか、誰が呼んだか、俺、河原乞食。
りんりん勇気、群盲撫でるか、犬殺るか。
瑠璃を採っては宇宙人。
連綿続いた灰色世界に、やってきました桃色渚。
老婆に花を咲かせましょう。
われは文盲、穢多と非人ががっぷりよっつ、割って入るは台風の目、この俺だ。
「をーし」と叫んだ俺はぐいと立ち上がる。
ん、と気張るが俺はこてんと転び、頭を打って思い出すのは、俺が障害者だってこと。
著者注A
今日の人権意識に照らして適当・適切と思われる語句や表現が作品中に登場しますが、これは一切著者の勉強不足によるものです。今後更なる勉強を約して、お詫びに代えさせていただきます。
◎ ライブラリー「肺々」へ→●